【介護予防・健康寿命は”歩行から”】1日2㎞以上歩ける十分な歩行能力を持ち、生活行動範囲を維持しよう!

1日2㎞も歩くのか?そんなに歩けないよ!歩かなくったって運動はできると思うぞ!

う~ん、確かに!

1日2㎞というと、結構な距離を歩くんだな~と思いますよね?

一般的に、自分の生活行動範囲を維持するのに、1日で2㎞以上の歩行能力(休憩挟んでも可)が必要と言われています。

でも、歩くことは健康に良いとは思うけど、1日2㎞以上=十分な歩行能力と言われてもピンと来ないし、「なぜ必要か?」って言われると、漠然としてはっきりとした理由が分かりませんよね?

 

でも、今日この記事を読むと、生活行動範囲を維持する”歩行”の大切さを理解して、「介護予防・健康寿命」のために今日から十分な歩行能力の維持することを意識するようになると思います。

なのでここでは・・・

  • なぜ十分な歩行能力が、私たちの生活行動範囲を維持するのに大切なのか?
  • 十分な歩行能力がないと、私たちはどうなるか?
  • まとめ:十分な歩行能力の維持は「介護予防・健康寿命」生活の”土台”!

・・・という流れで説明します。

目次

なぜ十分な歩行能力が、私たちの生活行動範囲を維持するのに大切なのか?

ところで・・・私たちはいつ高齢者になるのでしょうか?

質問です。みなさんは「どんなときに”高齢者”になったな~」と感じると思いますか?

例えばこんなときでしょうか?

「年金を受け取るようになった・・・」

「仕事を続けられなくなった・・・」

「介護が必要になった・・・」

少し古いデータになりますが、内閣府「平成15年度年齢・加齢に対する考え方に関する意識調査結果の概要」によると、半分以上の方は「身体の自由が利かないと感じるようになった」ときに高齢者になった自覚をするそうです。

「身体の自由がきかなくなった」とはつまり「日常の生活動作に支障が出て来た」ということになりますね。

日常の生活動作で一番重要なのは・・・? それは、歩行です!

介護業界では、日常生活動作のことをADL(Activities of Daily Living)と呼んで、下記の10項目があります・・・・

その中で一番重要なのは・・・・?お察しの通り、歩行です!

なぜなら、歩行以外の動作はすべて歩行に付随した動作で、歩行はすべての動作の根幹になっているからです。(介護の生理学・竹内孝仁先生 P137参照)

十分な歩行能力がないと、私たちはどうなるか?

「歩ければ、自分でトイレに行ける!」

「歩ければ、ダイニングで食事が出来る!」

「歩ければ、浴室にも行ける!」

・・・・しかしながら、・・・・・

「歩けなければ、介助なしにトイレに行けない・・・」

「歩けなければ、誰かの介助なしでダイニングで食事ができない・・・」

「歩けなければ、浴室にも行けない・・・」

・・・と、自分一人で行動出来る範囲が段々と狭まられてしまいます。

やがてそれは、外出をしなくなり、閉じこもりになり、最悪の場合寝たきりの生活になってしまいます。

なぜ人はあるけなくなるのか?

では、高齢になると歩けなくなると言われるのはなぜでしょうか?

よく言われているのは「加齢によって筋力が低下したから!」と言われます。

しかし、本当にそれだけの理由だからでしょうか?

高齢者が歩けなくなるのは「歩き方」を忘れてしまったから!

高齢者がケガや病気になって入院して、退院したら歩けなくなって帰って来た・・・という話をよく聞きます。

歩くだけでなく、立ち上がるときに「膝折れ」などすると「膝の筋力が弱くなった」と思いがちですが、立って体重がかかった瞬間に膝を固定する筋肉が収縮しなかったという「タイミング」が遅れただけなのです。

この「タイミング」をコントロールしているのは「脳」です。

「脳」は、身体の動作を行わせる「運動の記憶回路」を作動させ、立ったり座ったりします。

簡単言うと、「どんな動作でも長い期間していないと、体が忘れてしまって出来なくなる」ということです。

例えば、昔はスポーツをしていたが、今は昔のような機敏な動作が出来なかったり、ピアノを弾いていた人が弾くのを止めて、もう一度弾こうとしても上手く弾けなかったりします。

それは、一度出来上がった「運動の記憶回路」が、昔のように上手く作動させることができなくなったのです。

歩行にも同じことが言えて、「しばらく歩いていない人が、歩けなかったり、歩くのがぎこちないのは、立位・歩行の記憶回路が、ある精密さを持って素早く起動してこないから」なのです。(引用:介護の生理学P142)

もう一度歩けるようになるためにはどうしたら良いか?

では、歩けなくなった高齢者がもう一度歩行できるようになるにはどうしたら良いでしょうか?

それは・・・・もう一度「歩行練習」をしてもらうのです。

なぜ歩けなくなったかというと、単純に歩くことを忘れただけなので、脳に「歩き方」の動きを覚えこませることが必要なのです。

イチローも、素振りやフリーバッティングなどで「ヒットを打つ練習」を続けて来たからこそ、世界的に有名なバッターになりました。

歩行も同じく、「歩けるようになるためには、歩く動作そのものを練習する」必要があります。

これを「運動学習理論」と言います。

運動学習理論とは?

人が立ったり歩いたり、スポーツやピアノを弾くなど、生活の中である動作をしなくてはならないことが発生する(これを「動作の課題」と言う)と、その課題に対して脳の記憶回路が神経システムを通して、必要な筋肉システムを動かし始めます。

この一連の動きを習得するには、反復して動かす(練習する)しかありません。

反復によって脳がその動きを学習し、パフォーマンスか向上するという効果が表れます。

歩行能力も、歩行動作を反復して練習してもらい、脳の歩行に関する記憶回路を回復させることで、歩くという動作を回復させることが出来ます。

座位運動や筋力強化訓練では、歩行能力は回復しません!

時折、座ったまま運動や、筋力トレーニングを歩行練習として実施していることがあります。

しかし、上記でご説明した通り、歩けるようになるためには、歩く練習そのものをする必要があります。

もちろん介護現場等では忙しく、どうしても車椅子などで移動介助することが多いと思います。

しかし、シルバーカーや歩行器を上手く活用して、生活の中で歩く回数や距離を少しずつでも伸ばしてもらい、歩行能力を回復してもらいましょう。

免荷装置付トレッドミルを活用して歩行訓練をする

以前私が勤めていた「ポラリスデイサービスセンター」では、下記のように「免荷装置付トレッドミル(通称:Pウォーク)」を使って歩行訓練をしていました。

免荷装置を付けることで、体重が最大半分まで免荷することができ、正しい足の運びに集中して歩行練習をすることが出来ます。

また、免荷装置を付けることで転倒の防止につながり、歩行中にスタッフが常時いなくても練習が出来ます。

動画があるので、是非ご覧ください。

 

まとめ:十分な歩行能力の維持は、「介護予防・健康寿命」生活の”土台”!

如何だったでしょうか?

十分な歩行能力は、「介護予防・健康寿命」の生活を維持する土台であることを理解していただけたかと思います。

世の中には数多くの運動器具「介護予防・健康寿命」のためのサービスや商品も多く出回っているかとは思いますが、まずは外出して歩行する習慣をつけていきましょう。

散歩でも良し。ジョギングでも良し。

万歩計で計測してみて、2800~3300歩が2kmぐらいなので、最低でもそのくらいは歩くようにしてみると良いでしょう。

十分な歩行能力の維持(1日2㎞以上)が「介護予防・健康寿命」の生活を支え、自立した長い人生を楽しむことが出来るようになります。

今日も最高な1日を!

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参考文献

  • 「介護の生理学」竹内孝仁先生
  • 「新版・介護基礎学」竹内孝仁先生
  • https://jsfrc-powerreha.jp/care-for-independent-living/