さてみなさん。
下のイラストは、介護現場でよく見られる光景かと思います。
手厚い介護で良いと思いますが、何か問題ですか?
そうですね~。問題なさそうに見えます。
食事介助は介護現場でよく実施されている手法ですし、初任者研修や資格の勉強会でも普通に教えられる方法です。
しかし、食事介助は食事の自力摂取を取り戻す機会を失うだけでなく、安全な介助方法ではなく、誤嚥性肺炎になる可能性を高めています。
確かに、ケガや病気のために自力で食事を摂ることが出来ない場合、食事介助が必要かと思います。
その一方で、”食事時間が長くならないように”するために、時間を掛ければ自分でも食べることが出来る高齢者にも「食事介助」をすることが、介護施設でよく見かけられます。
(でもでも・・・・その気持ちもすご~~~く分かります(( ノД`)シクシク…)
しかし介護のプロとしては、「この高齢者は本当に食事介助が必要なのか?」見極める能力も必要かと思います。
ここでは、食事介助が招く問題を改めて考えて、自力摂取を促す方法を解説します。
目次
「食事介助」が招く問題点
「食事」とはいったい何か?
別の記事でも上げましたが、食事の持つ意味は「文化」として、「栄養」として、「摂食」としての視点があります。
この3つの視点をバランスよくケアすることが、本来の食事ケアになります。
(詳しくはこちらを確認→https://tjcareconsultant.com/diet/ )
しかしながら、食事介助はこの3つの視点を崩してしまう介助になってしまいます。
では、具体的にどんな問題が起こるか?解説していきましょう。
①自立した個としての存在を否定する
赤ちゃんが成長していく過程で、歩行・食事・トイレを自分で行うようになってきます。
歩行は自分で行動する範囲を広げ、トイレもおむつから離れ、自分の意志で排泄処理をするようになります。
食事も同じことが言えて、「自分の意志で食べ物を選んで口に入れる」という行動になっていき、他人への依存度が低下して、食事の自立度が上がっていきます。
しかし、大人に成長し自立した食事をしてきたにも関わらず、ケガや病気で介護状態に陥り、「自分で食事が出来ない」前提で介護職に「食事介助」させられてしまうと、せっかく維持してきた食事の自立性を低下させる危険性があります。
②食事の味を失わせる
まさか・・・同じものを食べてるのに味が違うの?・・・
・・・と思うかもしれませんが、食べ物の味には「主体性」が強く影響してきます。
本来であれば、自分の意志で食べる順番を決めて、1つのものから次へと食べていきます。
その主体性の中に五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚(=食感))が含まれていて、それを感じながら食事の味を味わうのです。
しかし、食事に主体性がなくなると、それらの感覚も鈍くなり、食事の味も変わってきます。
③誤嚥を起こしやすい
主体的に食事をするということは自分のタイミングで食事が出来ます。
つまりで、摂食→咀嚼→嚥下を自分でコントロールしていることになります。
しかし、食事介助をすることによって、そのタイミングがずれてしまい、誤嚥する可能性が高まります。
特に咀嚼をしっかりして「食塊」を作ることが、嚥下機能の向上につながりますが、この食塊を作るのに時間がかかるにも関わらず、食事介助によって一定の間隔で次々と食べ物が口に入れられてしまいます。
そうするとしっかりとした食塊を作ることが出来ずに、嚥下が上手くいかず、誤嚥してしまうことがあります。
食事介助・・・・実際にやってみました・・・・
この写真は、私の介護教室「かいごのへや」で、実際にみんなで食事介助をし合ってみました。
やってみての感想はやはり・・・・
- 「食べずらい」
- 「タイミングが分からない」
- 「いつスプーンが来るかわからない」
- 「味がわからない」・・・・
といったことを言っていました。
このように「食事介助」は、自立支援・安全性、両方の視点からも良くない介助だということが理解できたかと思います。では、どのようにしたら他人依存の「食事介助」を止めることが出来るでしょうか?
食事介助から自力摂取へ促す方法は?
インターネットで、食事介助になる理由を検索してみると・・・・
- 身体的な衰え・・
- 認知機能の低下・・・
- 嚥下や咀嚼機能の低下・・・
- 味覚の衰え・・・
・・・などなどが上がってきます。
なので、これらに対してどのように対応するかを考える必要があります。
①「なぜ自力摂取ができない体なのか?」を考え、4つの基本ケアを実践する
食事介助の理由はすべて、身体的衰えが理由になっていますね。
介護の現場にいると、どうしても目の前の事象に対して対応することが多いです。
目の前の高齢者が「食事ができない」・・・だから食事介助をする・・・
しかし、これらは「4つの基本ケア」をしっかり実践し高齢者自身を元気にさせることで、自力摂取を促しやすくなっていきます。
まずは、「水分ケア」と「運動=歩行ケア」を開始してください。
水分飲んで、体を動かすことによって、日中の意識も覚醒し、口腔機能も回復してきます。
また、お腹も動き出してきますので、「食欲」も回復してきます。
そうすることで、自力摂取へと変わっていくことが出来ます。
②高齢者本人が好む食事を提供する
食事は五感を使って楽しむ動作になります。
常態的に食事介助になっても、好きな食べ物は自ら食べることがあります。
これは私の経験ですが、胃ろうを付けた方がデイサービスをご利用になっていました。
普段は胃ろうで食事をすましていましたが、あるとき自宅で自分の好きなケーキを自分から食べたとのこと。
そして、むせることなく飲み込めたと聞きました。
その話を聞いてから、4つの基本ケアを実践しながら、ご本人の好きな食べ物を提供して自分で食べてもらうようにしたら、その後段々と自力摂取になっていきました。
なので、「好きな食べ物」から自力摂取をしてもらうところから始めてみて下さい。
まとめ:「水分+運動+好きな食べ物」で、食事介助から自力摂取へ促そう
如何だったでしょうか?
時間に追われてついやってしまう「食事介助」。
しかし、食事動作そのものに注目するのではなく、「なぜ食べられなくなったのか?」を考えることが大切です。
4つの基本ケアを実践していけば、高齢者は元気になり、自然に食事も自分で摂るようになります。
是非、視点を変えて、自力摂取を促せるようになっていきましょう。
何かご意見やご相談、「食事介助」から自力摂取になりました~などの話があれば、コメントもらえる嬉しいです!