介護離職を考える前に|「会社に申し訳ない」という罪悪感がもたらす3つの落とし穴

介護離職防止

介護離職を考える前に|「会社に申し訳ない」という罪悪感がもたらす3つの落とし穴

「会社に申し訳ない」と感じたあなたへ

親の介護が始まり、急に休む日が増えた。会議を抜けることが続いた。同僚に頭を下げる回数が増えるたびに、心の奥で「会社に申し訳ない」という気持ちが膨らんでいく——。

責任感の強い方ほど、この感情に押しつぶされそうになります。そして気づけば「自分が辞めれば、みんなが楽になる」という結論に手が届いてしまう。

けれど、その決断の前に、ほんの少しだけ立ち止まってほしいことがあります。介護現場で20年働いてきた私が、何度も見てきた「落とし穴」のお話です。

その罪悪感は、どこから来るのか

LIFULL介護のインタビュー記事には、こんな言葉が紹介されています。「会社に申し訳ない気持ちが強くなっていく」。介護と仕事の両立に限界を感じた経験者の、実際の声です(参照: [LIFULL介護 tayorini](https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/risyoku/005/))。

この「申し訳なさ」は、決して弱さではありません。むしろ、仕事に誠実だった人ほど抱える感情です。けれど誠実さが行き過ぎると、判断を歪めてしまうことがあります。

実際、2024年に介護・看護を理由に離職した人は約9.3万人にのぼります(出典: [三菱UFJ銀行 マネーキャンバス](https://moneycanvas.bk.mufg.jp/know/column/JipLaBrsKyY6nBL/))。2000年の3.8万人から2.4倍以上に増えており、多くの人が同じ気持ちで決断している現実があります。

【落とし穴1】「迷惑をかけている」という思い込みが判断を歪める

最初の落とし穴は、「自分が会社に迷惑をかけている」という前提そのものにあります。

ご自身では「申し訳ない」と感じていても、会社や上司の側は、必ずしもそう受け止めていないことが少なくありません。むしろ「もっと早く相談してほしかった」と感じる管理職の方を、私はたくさん見てきました。

ただ、現場の難しさもあります。マイナビが2024年9月に発表した実態調査では、「ビジネスケアラーへの支援制度があり、内容も充分」と答えた企業はわずか 11.5% にとどまりました(出典: [マイナビ プレスリリース](https://www.mynavi.jp/news/2024/09/post_45266.html))。約9割の企業は、まだ受け止めの体制が整っていないのです。

つまり、「申し訳ない」と感じる原因は、あなた個人の問題ではなく、社会全体がまだ慣れていないことに由来している場合が多い。これは責任を一人で背負う必要のないことです。

【落とし穴2】離職した後の現実は、想像より厳しい

「辞めれば楽になる」——そう思いたくなるのが当然です。けれど現実には、別の重荷が待っています。

離職後にやってくるのは、収入ゼロと支出増の二重苦です。デイサービスや訪問介護の費用は退職しても毎月かかり続けます。さらに、ブランクが長くなるほど再就職の難易度は上がっていく(出典: [カレスル介護コラム](https://caresul-kaigo.jp/column/articles/4595/))。

経験者の声には、こんなものもあります。「もっと介護に関する制度やサービスを調べておけばよかった」——退職を選んだ後、振り返って初めて分かることが多いのです。

「会社に申し訳ない」という感情で決めた離職が、数年後に「もっと早く相談すればよかった」という後悔に変わってしまう。この落とし穴は、本当によく見かけます。

【落とし穴3】相談しない選択が、選択肢を狭める

3つめの落とし穴は、相談しないまま決断してしまうことです。

責任感の強い方ほど「迷惑をかけたくない」「自分で何とかしたい」と一人で抱え込みます。けれど、相談しないということは、使えるはずだった選択肢を自ら閉ざしてしまうことでもあります。

2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、介護のためのテレワーク措置が努力義務化され、入社6か月未満の除外規定も廃止されました(参照: [SmartHR Mag](https://mag.smarthr.jp/hr/labor/ikujikaigohoukaisei_pointkaisetsu/))。会社の制度や、地域包括支援センター、ケアマネジャーといった社外の支え手も、相談しなければ動き出しません。

「相談しない選択」は、優しさではなく、実は一番大きな機会損失になります。

「離職する」 vs 「相談して両立を探る」 — 3年後どう違うか

観点 すぐに離職した場合 相談して両立を探った場合
収入 ゼロ。介護費用は継続 業務調整・テレワーク等で維持の可能性
キャリア ブランクが長期化 継続雇用で経験が積み上がる
介護の質 一人で抱え込みやすい 制度・専門職と分担できる
精神的負担 「辞めた後悔」が新たに発生 周囲と分かち合うことで軽減
再就職 年齢とブランクで難航しがち そもそも辞める必要がなくなる場合も

もちろん、相談しても両立が難しいケースはあります。けれど、選択肢を見てから決めるのと、見ずに決めるのとでは、3年後の風景が大きく変わります。

管理職の方へ — 「申し訳なさ」を抱える社員にかけたい一言

部下を持つ方にもお伝えしたいことがあります。

介護に直面した社員の多くは、まず「申し訳ない」と感じています。彼ら・彼女らは、相談する前に「自分で何とかしよう」と決めて、限界が来たときに辞表を持ってくる——というパターンが本当に多い。

だからこそ、管理職の側から 「介護のことで困っていない?」と一言かけるだけで、ずいぶん違います。具体的なアドバイスは必要ありません。「相談していい場所がある」と示すこと、それ自体が支援です。

社員が介護に直面する段階は、「介護前の備え期」「介護初期の初動期」「本格期の持続期」 の3つに分かれます(参照: [日本の人事部 プロフェッショナルコラム](https://jinjibu.jp/spcl/cwgbcjoe/cl/detl/5854/))。どのステージにいるかで必要な支援は変わります。一律の制度案内ではなく、その人の状況に合わせた一言が届くと、社員の決断は変わります。

介護現場20年から伝えたいこと

最後に、現場の言葉でお伝えします。

  • 「会社に申し訳ない」と感じることは、誠実さの証であって、弱さではありません
  • けれどその誠実さで、自分の選択肢を狭めないでください
  • 相談していい。立ち止まっていい。会社の制度も、地域包括支援センターも、ケアマネジャーも、あなたが「使う」と決めれば動きます
  • もし会社に相談できる雰囲気がないなら、社外の専門家に話すことから始めてください

「もっと早く相談してよかった」——この言葉を、経験者からではなく、これから介護に向き合うあなたから聞きたい。それが、20年現場で働いてきた私の願いです。

介護と仕事、両立の相談先をお探しの方へ

TJケアコンサルタントでは、介護現場20年の経験を背景に、介護と仕事の両立に悩む個人の方、介護離職を防ぎたい企業の人事ご担当者の方からのご相談をお受けしています。

「うちの会社に介護制度はあるけれど、誰も使っていない」「社員から介護の相談を受けたが、どう答えていいか分からない」——そんな段階からでもご相談ください。

📍 元の予防策の全体像はこちら → [社員の介護離職を防ぐ5つの予防策|見逃しやすい7つの兆候と企業の対応法](https://tjcareconsultant.com/?p=2038)

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